その坂を越えたらー後編ー







大変な坂道♬大変な坂道
よっこらしょ〜よっこらしょ♫




坂道の多い街に越してきて、早15年。今ではもうすっかりと慣れたけれど、どこを歩いても上っては下り、下っては上る坂道に引越し当初は辟易した。




人生を道に喩えることはよくあるけれど、本当にそうかもしれない。上ったり下ったり、曲がりくねったり。迷路みたいな道もある。先が見えない人生みたいだ。人生が行き着くところは、「死」。道にも「行き止まり」がある。あ、坂道のことならタモさんに聞いてみよう。タモさんは、坂道学会の副会長だよね。





・・・



瀬戸内寂聴さんは、人生には思ってもみない坂があると言った。その坂の名前は…




マサカマサカマサカマサカ



・・・



たったひとりのひととの出会いによって、マサカ息子が別人のようになってしまうとは思いもしなかった。

元気でいるとばかり思っていたのに、マサカうつ状態になっていたなんて、そんなこと知る由もなかった。

コツコツと努力し、念願叶い入社した会社を、マサカ辞めることになるとは思わなかった。




だけど、今ならわかる。君の人生にもマサカという大きな坂が現れたんだね。それは避けられない人生の坂。それは自分が成長するための坂。




それはいつかきっと、、、しあわせになるための坂。




・・・




いつか、いつの日か、本来の屈託のない笑顔の息子に会える日がやってくる。そう願い、そう信じるしか無かったわたしは、人生最大の困難だと感じていた坂を無理して上ることをやめにした。焦っても仕方がない。




生きていればそれでよし。




そう自分に言い聞かせながらも、無事であることを祈る日々。いったいどれだけたくさんの時間が流れただろう。時に、ふいに襲いかかる不安や心配の感情に押し潰されそうになったり、立ち向かおうとしたりしながら。




そんなある日、いつも見ていた景色が変わっていることに気がついた。急すぎて上れないと思っていた坂を、わたしは知らず知らずのうちに越えていたようだ。あんなにきつかった坂を。気のせいかもしれない。またすぐに別の大きな坂が現れるかもしれない。だけど、それはそのときに考えればいいこと。





久しぶりに見た君の綺麗な字が、霞んでよく見えない。君は、長くてしんどい坂を自分の力で乗り越えたんだね。君は今、大きな空に向かって羽ばたこうとしているところなんだね。






マサカ、こんな日が訪れようとは。信じて、待ってて、良かった。

































ママへ