もうひとりのお母さんも、もうひとりのお兄ちゃんも、どこも、かしこも。


 




息子は、もうひとりのお母さんに会いに行った数時間後、大きな袋を抱えて帰宅した。



もうひとりのお母さんとは




中森先生に夕飯ご馳走になった。オレが寿司食べたいって行ったら連れてってくれたわ。「あんた、これ全部食べなさいよ!」って、めっちゃ食わされたわ。




それとさ、これ。「あんた、これ使って健康になりなさい!これ買いなさいよ!」って、中森先生色々買ってくれた。笑






 
LOFTの袋から出てきたのは、お風呂グッズやら健康グッズだった。わたしは中森先生らしいなと思った。ふらっと会いに行くかつての教え子たちに、いつも美味しいご飯を食べさせてくれたり、話を聞いてくれる。時間が無いときは、「ほら、あんたたち、これで何か食べて帰りな!」とお金をくれることもあるそうだ。



その日も息子の体調をさりげなく気遣ってこんな素敵なプレゼントをしてくれたに違いない。本当にお母さんみたいだね。みんなの、もうひとりのお母さんだ。




なんて有難いことだろう。私は中森先生は元気だったのか、他の先生方にも会えたのかと息子に聞いた。息子が高校を卒業してから学校に行く機会も無くなってしまい、先生方のことが気になった。



PTAでのお手伝いで毎月学校に通ったことや、講演会で来校していたダイアモンド☆ユカイとトイレ前で妙なテンションの挨拶(朝までシャンパンを呑んでいたと小声で教えてくれた笑)を交わしたことや、息子がお世話になったたくさんの先生方の顔が浮かんできた。




あぁ。学校も会社とおんなじだったわ。中森先生は元気だったけど、ニ年前にパワハラにあって半年休んでたんだって。全然知らんかった。あんなにパワーの先生なのにな。休んでる間は、いろんなところに旅行に出かけたって言ってた。「こんな時代なんだからね、あんたもどんどん外に出なさいよ!」って言われたよ。




一年の時の担任のミッチー(若くてカッコよくてお兄ちゃんみたいな先生)もパワハラで激痩せしてた。⚫︎⚫︎先生も▲▲先生も鬱で休職中なんだって。今回のこと、オレは全然耐えられると思ってたんだよねって話したら、ミッチーに言われたわ。




お前、それ間違ってるぞ。
それ耐えたら絶対にダメなやつだからな。



いったい世の中どうなってるんだ。どこもかしこも、パワハラで溢れてるなんておかしすぎやしないか。



私立高校だから転勤も無い。あまりにキツくて仕事を辞めようと思うことも多いそうだ。でも、こうして時々教え子が会いにきてくれるからやめられない、教え子が会いにきてくれた時に私が居ないと可哀想だから辞められないんだよねと、中森先生は言っていたそうだ。




なんて心強いこと。息子には支えてくれる人がたくさんいる。息子にとって中森先生は、本当にもうひとりの母のような存在だ。母でも無い限り、こんな言葉が出てくるわけがない。










あんた、わたしが会社に出て行こうか?