「夜と霧」ー人生の意味ー


ー夜と霧ー



暗くなると前が良く見えなくなる。がかかると視界が悪くなりちょっとの先も見えなくなる。画面に映し出される恐ろしい映像。その渦中にいる人びとは、先が見えない夜と霧の中にいる思いだろう。




このロングセラー本を読もうと思ったのは、私が敬愛する精神科医の肉q先生がお勧めしていたから。著者のヴィクトール・E・フランクルユダヤ人。かの有名なフロイトアドラーに師事して精神医学を学んだ精神科医学者。



本の内容は周知のとおり、精神科医フランクル強制収容所生活での記録だ。プロボクサー村田諒太が、試合前に何度も何度も夜と霧を読むことで、練習の辛さや試合の厳しさを乗り越えることができたと言うエピソードも話題になった。それを知ったときも興味を持ったけど、読むには至らずにいた。



ところが、肉q先生の動画を観て、どうしてもこの夜と霧を読みたいと思った。なぜならこれは、哲学書とも言える体験記なのだ。




精神科医肉q先生推薦著書【夜と霧】


肉q先生の優しい声が心に響きます




戦争体験も無く幸せなことに災害にも遭ったことがない私と、著者の壮絶な体験とを比較するのは見当違いというもの。けれども、どんな人であれ、程度の差こそあっても、人間生きている間には大切な人を亡くしたり、辛く悲しい出来事を幾度となく体験する。それが人生。人生には夜と霧がある。人それぞれの夜と霧



私は(過去に何度も書いたので詳細は省略)うつ状態になった息子と連絡が途絶えた時に、目の前が真っ暗になった。出口どころか少しの先も見えず、まさに毎日が夜と霧。なぜ?どうして?の疑問符と同時に、襲いかかる自責の念。どんな本を読もうと、医師に相談しようとも、答えが見つからずに悩み苦しんだ。



そんなある日、重怠い身体を引き摺る様にしてyoga教室に出向いた私は、信頼する講師に振り絞る声で打ち明けた。やっとの思いで教室にたどり着いたはいいものの、子どもの事が心配で不安で、心ここに在らず状態でいることを。静かに頷いた講師は私にこう言った。優しく、そしてきっぱりと。


親は何も出来ないんです。ただ出来るのは、子どもが元気でいる姿をいつも思い浮かべることだけなんです。親にはそれしか出来ないんです。



・・・
 


強制収容所の被収容者たちは悍ましいほどの過酷な労働と、理不尽な暴行などの仕打ちを受けまくる毎日だった。痩身具の他、全身の体毛までも全て剃られ、名前など最初っから無かったモノとされ、番号で呼ばれる。ひとでもモノでもなく、ただの数字で。




「119104」




まさに身包み剥がされた状態。そこで自分に残っていたものは、お互いを笑いとばそうとやっきになる、やけくそのユーモアと好奇心だったなんて。それは、自分を見失わない為の「魂の武器」だとフランクルは言う。



私はと言えば…。途方に暮れるのにも疲れて果て、自分に出来ることは何も無いことを渋々受け入れることにした後は、起こったことを自虐ネタにできるようになった。やけくそだったのかもしれない。



息子とは会うことも会話も出来なかったけど、yoga講師に言われた通りに、とびきりの笑顔で元気な息子の姿を思い浮かべ、心の中で昔みたいに会話をした。本当に今まさに私の目の前に、いつもの元気な息子が存在するかのように。自由に心のままに


 
フランクルは生死さえわからない妻と、心の中でありありと会話した。訪れるかもわからない未来をイメージして。収容所の中で自分の未来を見すえることに逃げ込めた人たちは、自分を精神的に励ますことができたと言う。今思うと、私も無意識のうちに、やってくるかわからない未来に逃げ込むことで、自分で自分を励まして夜と霧の日々をやり過ごしていたのだと思う。



ありがたいことに未来は未定。わたしたちが過去の充実した生活のなか、豊かな経験の中で実現し、心の宝物としていることは何も誰にも奪えない。ー夜と霧

最期の瞬間まで誰も奪うことのできない人間の精神的自由。ー夜と霧



・・・



私は夜と霧の真っ只中にいた頃、飽きもせずに毎日同じことを考えていた。いったいこの出来事は、何を意味しているのだろう。私にとってこれはどういう意味を持つのだろう。そんなことばかり考えていた。だけど、どれだけ頭を悩ませたところで、一向に答えは見つからなかった。



この先もまだ長く続きそうな私の人生の中で、あと何回くらい夜と霧がやってくるのだろう。そのとき、私はどう向き合えばいいのだろう。



親は何も出来ないんです。そう言って静かに微笑んだ望月先生は、病気で生き方を見失ってしまった方へこう語っていた。先の動画の最後で、精神科医肉q先生も生きる意味について、同じ解釈をされていた。
 



ー生きる意味ー




月子のオススメです




人生に問いかけるのではなく

人生がわたしに問うているのだ




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お前はどう生きるのか